カテゴリー別アーカイブ: 新聞(共通)

ホウレンソウ安定出荷 夏季の栽培方法確立

__5月から10月まで、ホウレンソウをハウスで栽培する石井町の田幡裕さん。徳島県では、冬場の露地栽培が盛んだが、真逆の夏の暑い時期を狙ってホウレンソウを栽培するのは珍しい。
__田幡さんは「夏、店頭に並ぶホウレンソウは、どれも県外産ばかり。どうにか地元のものをと思い栽培し始めました。JAや種苗メーカーの協力のおかげで栽培方法を確立することができ、出荷までこぎつけることができました」と話す。
__ハウス全体に目が行き届くようにと、20㌃の圃場にハウス5棟を所有。安定した出荷量を確保するため、ハウスごとに品種や播種期をずらし、1週間に1棟ずつ収穫する日程を1シーズンに3ターンほど繰り返すという。
__「ホウレンソウは暑さに弱いので、水の管理に一番注意しています。ハウス内の温度や育ち具合、土の乾き具合を観察して水やりをしています」と田幡さん。自作した灌水施設をフル活用し、ハウス内での部分的な水やりにも取り組む。
__「品質を高めて、もっとおいしいホウレンソウを食べてもらいたいです。夏場の体力維持に、ホウレンソウは最高ですよ」と話してくれた。

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〈特集〉制度改正で補償充実 園芸施設共済で備える

__台風や集中豪雨による気象災害が近年は頻繁に発生し、農業用ハウスに甚大な被害が発生しています。園芸施設共済は昨年の制度改正で、10割まで補償できるようになったほか、損害額1万円から共済金の支払対象になるなど、充実した内容となりました。今号では、園芸施設共済に加入する農業者の声を聞きました。

安心感があれば挑戦できる
徳島県阿南市  湯浅 幹根さん
__就農前は県外で会社勤めをしていましたが、父の体調不良をきっかけにUターンし、スダチ栽培を始めました。2016年に補助事業を受けハウスを新設しました。ハウスの新設後、親族の勧めで2棟(17㌃)を園芸施設共済に加入しました。17年9月の台風18号では、強風に押され、建てて2年足らずのハウスは地盤が安定していなかったため、基礎から浮き上がりました。
__園芸施設共済に加入した当時は、まさか自分が被害に遭うとは想定しておらず、就農後すぐの出来事だったので不安が大きかったのを覚えています。万一への備えが経営の安定につながると身をもって感じ、保険加入と同時に筋交いなどの強風対策の重要性にも気付きました。
__徳島県のスダチは、全国に流通する出荷量の98%を占めます。一年を通して安定した供給量を出荷するには、ハウスでの加温が欠かせません。現在、全国の料理店などで使用されていても、安定した供給がないとほかのかんきつ類で代用されてしまいます。
__万一の事態があっても立て直すことができるという安心感があれば、ハウス栽培に挑戦しやすいのではないかと思います。今後は、今の規模を維持し、阿南市の特産品であるハウススダチを守っていきたいです。

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シャクヤク 産地の維持へ若い世代に期待

_那賀町相生地区は西日本有数のシャクヤクの産地だ。相生シャクヤク部会部会長の下川浩一〈しもかわ・こういち〉さんはシャクヤクを栽培して20年になる。現在はハウス・露地合わせて25㌃で、「ルーズベルト」「滝の粧」など5品種を栽培。ハウスは3月中旬から4月中旬まで、露地は4月中旬から5月下旬ごろまで栽培・出荷する。
_美しい女性をたとえることわざに「立てば芍薬〈しゃくやく〉、座れば牡丹〈ぼたん〉、歩く姿は百合〈ゆり〉の花」とあるように、シャクヤクはすらりと伸びた茎の先に咲く花が美しく、母の日に贈る花として人気だ。
_JAアグリあなんの井岡明徳〈いおか・あきのり〉さんは「母の日用として淡いピンク色のルーズベルトだけで4万本が出荷されている」と話す。
_「灰色かび病の防除にはとても気を配り、収穫のタイミングが難しい。早すぎたら花が咲かないことがあるし、遅すぎたら花が開いて出荷できない」と下川さん。「今後は面積が維持できるよう、栽培をやめたり面積を減らしたりする人の園地を、30代、40代の若い人が継ぐように頼んでいる」と話してくれた。

 

 

 

 

 

写真説明=シャクヤクを収穫する下川さん

優れた農産物 もっと売り込もう  商品開発に住民団体が一役

徳島県阿波市「あわcolor」
_阿波市内外の若手生産者、後継者たちを中心に結成した住民団体「あわcolor(カラー)」では、同市の農産物の特色を生かした商品開発に取り組んでいる。代表の三木みずほさんは、結成のきっかけを「阿波市は地元の人が思っている以上に素晴らしい素材にあふれています。そのことをPRしたいけれど良い方法が分からないという話を聞いて、加工や販売についての経験を共有することで、お手伝いできるかもしれないと思ったからです」と話す。

_昨年8月の団体結成から7カ月、試作と改良を重ね、待望の商品第1弾が完成した。グルテンフリー、化学調味料無添加で食の安全性を重視した商品、アレルギーがある人でも安心して食べられる商品など、阿波市産の素材を使った加工品10品だ。メンバーの得意分野を生かした商品が形になったときの喜びはひとしおだった。
_地域ブランドとして発信していきたいという商品の数々は、毎月第2日曜日に開催する「つきいちマルシェ」「とくしまマルシェ」などのイベントに出品し、大好評だという。
_各イベントでの販売のほか、地域のサポートセンターを通じて実際に商品を手に取ることができるような機会も設けている。
_三木さんは「素材の良さは何よりの強み。阿波市には、香りや甘味に優れた果物、農薬使用を控え手塩に掛けた野菜など、まだまだたくさんのおいしいものがある」と話す。
_今後については「さまざまな認証を受けるなど、こだわりを持って事業に当たっている方も少なくない。同じ思いを持つ仲間のつながりが広がっていき、お互いの良さを伸ばしサポートしあえるような関係づくり、若手が活躍していける土台づくりの役に立っていけたらと思う」と三木さん。「それがさらに阿波市のPRにつながっていけば、もっとすてき。これからも永く続けていけるよう、あわcolorをみんなで大事に育てていきたい」と笑顔で話す。
_また、ホームページを整備するなどして「通信販売などの展開も視野に入れている」と意気込んでいる。

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写真説明上=イベントで出店するメンバーら。前列右から4人目が三木さん
写真説明下=あわcolorが開発した商品

 

〈収入保険 私の選択〉 

徳島県鳴門市  谷口 一郎さん
若い担い手に加入を勧める

__会社勤めをしていましたが、結婚を機に農家に転身しました。水稲は周りの方から依頼を受けて増えていき、今では当初の倍以上の面積になりました。レンコンも規模拡大を続け、早生・中生・晩生と3種類を栽培し、今は早生の分の植え付けをしているところです。
__収入保険には初年度から加入しているのですが、最初はあまり乗り気ではありませんでした。昔からの農家の考え方として、収入が減ったり働き手が減ったりしても、自分たちが辛抱したらいいという思いがあったかと思います。
__しかし、うちは家族経営でもあるし、自分や家族に何かあったら収入にも直結するから、加入しておいた方がいいと父にも勧められ、加入を決断しました。
__これまで両親と妻と4人で農業に取り組んできましたが、その父が昨年亡くなり、3人になりました。そのため、どうしてもレンコンの掘り残しがあったり、作業が以前ほど進まないことがあります。このようなときに、収入保険に加入しているので、収量や収入が減ることがあっても乗り切ることができるのではないかと実感しています。若い担い手たちには勧めているところです。
__おいしいレンコンをもっと食べてもらいたいです。煮物を多めに作って、それを天ぷらにして食べるのもお勧めです。今後は、家族以外も雇用して、レンコンの規模を拡大していきたいですね。

 

 

 

 

 

 

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品目追加・雇用・JGAP 法人経営の拡充を先導

__ニンジンの収穫繁忙期を迎えた藍住町の安崎浩二〈あんざき・こうじ〉さんは、株式会社あんちゃんふぁーむの代表取締役を務め、主にニンジン7㌶、水稲6㌶、ミニダイコンなどの野菜6㌶を栽培。「3㌃のニンジン栽培から始め、規模拡大するにつれて、新しい品目を栽培することや従業員を雇うこと、農業経営について挑戦の連続だった」と振り返る。
__あんちゃんふぁーむは家族5人と従業員6人の11人で構成。品目ごとに担当を設けている。「全員がやりがいを持って、仲良く作業することがうまくいっている秘けつ。播種や選別、栽培に関することすべてにどんどん意見を出し合うことで、目標や方向性を確認しあっている」と安崎さん。
__会社全体で取り組む姿勢が、技術や品質の向上につながり、エコファーマー認定やJGAP(日本GAP協会策定の農業生産工程管理)認証を受けることにつながったという。
__所有するトラクターや農機具は10台を超え、自分で整備、修理するのが趣味。「農業をやっていて妻が唯一ほめてくれるのがそこ」と笑顔で話してくれた。(関本剛士)

写真説明=収穫したニンジンの搬送準備をする安崎さん

 

 

 

 

 

 

 

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〈輝く女性たち〉〝味のある野菜〟を作りたい

豊崎 舞 さん

★阿波市阿波町★ホウレンソウ、ナノハナ、アレッタ、スナップエンドウなど12~13品目100㌃)

*阿波町で農園「味菜園」を夫婦で営む豊崎さん。屋号は「甘い野菜がおいしいとよくいわれますが、甘味だけでなく、その中に酸味や苦味などの野菜本来の持つ味を出したい、〝味のある野菜〟を作りたいという二人の思いが込められているんです」という。
*阿波市・吉野川市の若手女性農業者で結成された「阿波スピカ」や、農林水産省が推進する「農業女子プロジェクト」に参加するなど、オンライン勉強会や情報交換などにも積極的に取り組んでいる。
◆    ◆
――就農のきっかけは?
*夫が長期間にわたり体調を崩したことがきっかけです。当時、会社員で育児休業中だったのですが、農園をそのままにできないし、主人が元気になったとき引き継げるように守っていこうと覚悟を決めました。退職後、NPO法人とくしま有機農業サポートセンターで半年間学び、本格的に農業に取り組みました。
――どんな取り組み?
*SNS(会員制交流サイト)などで情報発信をしています。圃場の様子や収穫した野菜が食卓に上がったときの写真など、農業の日常の一コマを目にしてもらえたらと思っています。
*個別宅配サービスをはじめとした取引先のうち、新たな販路を開拓したこともあり、前職のスキルというか、強みを生かすことができたと思っています。
――これからの目標は?
*どちらかが主で農業を行うというよりも、支え合いながら2本柱でやっていきたいです。二人とも現場が好きで、ずっと土を触っていたいという思いがあります。日々学びと実践。大きく広げていくよりも、目の届く範囲で品質の良い野菜を安定的に作っていけるようにしていきたいですね。

写真説明=「土作りが一番難しいので、土壌分析をして、前作との兼ね合いやバランスを、微調整を加えた施肥計画を二人で相談しながら立てています」と豊崎さん

 

 

 

 

 

 

 

働き方改善、6次化推進 「勝占いちご」を盛り立てたい

* 東日本大震災をきっかけに、2011年10月、東京から徳島市大原町に帰郷し、家業のイチゴ農家を継いだ有限会社西岡産業取締役の西岡さち子さん。「当時、コンビニなどから食べ物が消えて、食の大切さに気付きました。食べ物を作る仕事っていいなあと思い、子育てにも適していると考えて決断しました」と振り返る。
* 西岡さんは「おいしく、安全で、喜ばせられるもの、自分の子どもに食べさせたいものを作ること」を基本にイチゴ栽培に励む。
* 就農後にまず手掛けたのは、栽培一辺倒で無理を重ねる労働状況の見直しだった。作業の集中時や収穫適期を予測することで働き方を改善し、買い手の要望を考慮するなど売り方も工夫した。知人の声をきっかけに西岡さんの母特製のイチゴジャムを販売するなど、6次産業化も進めた。
* 「SNS(会員制交流サイト)なども活用してイチゴ栽培の様子を知ってもらい、特産『勝占いちご』を産地のみんなで盛り立てていきたい。個人の名を冠するのではなく、勝占いちごが認知され、選ばれるイチゴになるようにこれからも取り組んでいきたいです」と意気込む。
* 商品の一つ「冷凍勝占いちご」は、?本全国の優れた産品を発掘・表彰する「フード・アクション・ニッポンアワード2020」入選100産品に選定されている。

写真説明=「赤い実を収穫するのがとにかく楽しい」と西岡さん

なると金時 ブランド維持へ家族経営の強み 技術を検証する余裕を創出

***鳴門海峡近くの海のミネラルを多く含んだ砂地と、温暖で降水量の少ない気候が、「なると金時」の高い糖度を生み出す。鳴門市大津町の尾原健一さんは、両親と妻、息子の孝嘉さんの3世代で、なると金時を栽培。家族経営の強みを生かし、畑ごとに植え付け期を変え出来栄えを比較するなど、品質の向上に余念がない。
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* 同市で栽培されたサツマイモは「なると金時」というブランド名を冠され、主に関西圏で多く消費されている。「安納芋」がしっとりした味わいであるのに対し、なると金時はホクホクとした食感が特徴で、天ぷらや焼き芋など用途は幅広い。「皆さんの好みに応じた食べ方をして、その味を楽しんでほしい」と尾原さん。
* なると金時の品質維持の裏には、並々ならぬ研鑽の跡がある。新たに開発された農業資材なども取り入れているが、畑の環境にそれが合致しているかは、試しながらになるという。尾原さんは「より良い方法は常に模索しているが、品質低下を招くような妥協は一切しない」と話す。
* 尾原さんがそのような手間暇をかけられる背景には、経営をともにする家族の存在がある。現在の3世代営農は、人手の数なら近隣のサツマイモ農家の中でも随一だ。特に、2019年に農業大学校を卒業して営農に加わった孝嘉さんの影響は大きく、「仕事に余裕が生まれ、できることが増えて栽培面積は拡大した」と話す。
* 従業員を雇用するのも良いが、ハウス栽培などと異なり、天候などで就労時間が左右される畑作では、「やはり家族経営の方が融通が利き、作業に集中できる」という。孝嘉さんは農業大学校で学んだことを生かし、経営のさらなる好転に意欲的だ。

写真説明1=「おいしいと言ってくださる消費者さんの声が何よりもうれしい」と健一さん
写真説明2=サツマイモをサイズ別に選別する孝嘉さん