農業共済新聞(5月)を掲載しました

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ハウススダチ 例年超える収量に
徳島県佐那河内村 森下嘉文さん
コロナ禍、燃料高騰、獣害……リスクに備え収入保険加入

_【徳島支局】2023年5月上旬、徳島県の特産品ハウススダチの出荷が佐那河内村で始まった。同村の森下嘉文さん(69)は、ハウス10㌃、露地40㌃を手がけ、ハウスは6月末まで、露地は8月下旬から9月末まで収穫し、JA徳島市を通じ全国へ出荷される。出荷が始まったハウススダチは、露地スダチと比べ果皮が薄めで果汁が多く、まろやかな酸味が特徴だ。

_森下さんのビニールハウスでは、12月末に被覆、その後は加温して温度を管理する。露地栽培は5月が開花期だが、ハウス栽培にすると2月に開花。開花期間中には通風換気を徹底し、防除に努める。
_「資材・燃料・薬剤などが高騰して、ものによっては1・5倍や2倍に価格が上がりました。秋から冬にかけて出荷する貯蔵スダチを含め、年間を通し消費者にスダチを届けるため、ハウス栽培は欠かせない方法です」と森下さん。
_20年のコロナ禍の際は、飲食店などの需要が減り、スダチの価格は5割ほどに落ち込んだ。
_「このような価格の減少は過去にはありませんでした。気候も変わり何が起こるか分からないため、もしものときの備えとして収入保険に加入しています。最近では露地栽培のスダチの新芽をシカに食べられ、収穫量が減り、木の枯死が見られます。この場合も一定の収入低下があれば補償してくれるので安心です」
_22年の収穫量は、不作により例年の4割程度となった。不作となったのは県内全域で、スダチを原料とする商品の販売を休止する企業があった。「何年も栽培していますが、初めての出来事でした。流通量が少ないため、消費者の手に届きにくい状況でした」
_森下さんは「今年のハウススダチは例年より量が多く、露地スダチは花が多いので昨年の倍以上の収穫量を見込んでいます。爽やかな食味をより多くの方に楽しんでいただきたいです。スダチが台所の脇役から主役になることを期待しています」と話す。

スダチはトゲがあるため長袖で収穫する森下さん JA徳島市での出荷作業。露地とハウス合わせて年間約13㌧のスダチを出荷する