農業共済新聞(11月)を更新しました

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「木頭ゆず」で持続可能な営農へ
徳島県那賀町 ㈱黄金の村
雇用創出で地域に貢献

_【徳島支局】「地域に新たな雇用を生み出し、その発展に役立ちたい」と話す神代晃滋さん(60)は、那賀町木頭地区にある「株式会社黄金の村」の取締役。同社には、地元住民だけではなく県外や海外からスタッフが集まり同地区を盛り立てている。栽培の現場をまとめる神代さんは、林業を目指し大阪府から徳島県へIターンし、「木頭ゆず」に魅了され農業に転向。当初は個人でユズを栽培していたが、2013年に過疎化が進む同地区をユズで再び輝かせようという思いから、自社栽培と加工を営む黄金の村を設立した。

_剣山系の山々に囲まれた盆地に位置する同地区は、夏と冬の寒暖差が激しく、年間降雨量は四国1位の記録があるほど多い。これらの条件が合わさることによって、香り高く酸味の強い木頭ゆずが育つ。
_同社では、自社栽培のほか約120戸の契約農家から木頭ゆずを仕入れ、自社工場でポン酢やゆずこしょうなどの調味料、スイーツ、サイダーなどさまざまな商品へと加工する。
_海外への営業にも取り組み、フランスや米国などへユズ玉やユズ加工商品を輸出し、販売量全体の約3割に達するという。そうした試みがユズの産地としての持続可能な営農を実現している。
_神代さんは16年からオーストラリア原産のかんきつ類「フィンガーライム」の生産にも取り組む。4~8㌢の果実に詰まっている粒状の果肉と独特な強い酸味が人気で、フランス料理などの高級食材として使用されている。「フィンガーライムをユズに次ぐ新たな木頭のブランド作物にしたい」と神代さん。日本料理でも使われるような身近なものになり、市場の拡大につながればと期待する。
_新たな市場開拓に踏み切り、その挑戦を引き継ぐ次世代の雇用にも希望を見いだしている。神代さんは「木頭に来てから17年たつが、高齢になった自分が新たな取り組みをできるぐらい、今もなおここは可能性に満ちている」と話してくれた。

 

黄金色に輝くユズを一つ一つ丁寧に摘み取る神代さん 収穫時期が異なる3種の木頭ゆず果汁「黄金の雫」(写真提供=神代さん)