農業共済新聞(7月)を更新しました。

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加工品販売、EUへの輸出も 有機ユズを丸ごと活用
徳島県三好市 中村博さん
手作業で害虫防除、園地守るナギナタガヤ

_【徳島支局】「ユズは果皮から果肉、果汁まで使うので、安心してまるごと味わってもらえる商品を届けたい」と話す三好市山城町の中村博さん(63)。標高400㍍にある中村農園の代表として「天空の徳島柚子」を栽培する。2016年に父の後を継ぎユズ栽培を始めると同時に、有機JAS認証取得を見据え、化学肥料・化学農薬を使わない栽培方法へ移行した。20年10月に有機JAS認証を取得し、ユズ玉や加工品の販売、黄色ユズのEU加盟国向け輸出にも取り組む。

_化学肥料や化学農薬を使わない有機栽培では、害虫防除や土作りが大きな課題だ。葉を食べるアゲハチョウの幼虫は手作業で1匹ずつ防除し、樹体を傷つけるカミキリムシが付かないように、これも手作業でガードネットを巻き付ける。
_ユズの下草にはナギナタガヤを植えた。土壌の浸食や養分の流出を防ぎ、夏場の地温上昇や乾燥を抑える効果が期待できる。ナギナタガヤが緑肥となり豊かな土を作り、害虫の天敵となるテントウムシやハチなどが集まるという。
_大切に育てた有機ユズをたくさんの人に味わってもらいたいという思いから、加工品は爽やかな酸味や香りを生かせるよう試作を重ねた。有機ユズ100%の「ゆずジュレ」「ゆずシロップ」を販売する。
_年間約2㌧のユズを加工品の原料とするものの、搾汁後の果皮が活用できていない。果皮を使った精製オイルや入浴剤などの開発を検討しているが、色や香りを再現させる加工技術や商品化にかかるコストなどが課題となっている。
_現在販売するユズは、約30年前に父が植樹した木から収穫したものばかりだ。老朽化で「着果の裏表が激しくなってきている」と中村さん。「ユズは果実が十分にとれるようになるまで長い年月がかかります。父が植えた木を切るのは忍びないですが、補植や改植をしながら、山城町のユズを守っていきたいです」と優しくほほ笑む。

「日当たりと見晴らしの良い農園で大切に育てた天空の徳島柚子を自信を持ってお届けします」と中村さん 園地の環境を改善する効果もあるナギナタガヤ ガードネットを幹に巻き付けユズの幼木を守る