*徳島県最南端に位置する海部郡は、農業用ハウスでのキュウリ促成栽培が盛んな地域。近年の高齢化や担い手不足による栽培農家の減少を受けて、2015年に地元JAと行政が共同で「きゅうりタウン構想」を立ち上げ、新規就農者を育成する「海部きゅうり塾」を開講した。第2期卒業生・美波町の勝又篤志〈かつまた・あつし〉さん(36)は、海部きゅうり塾で学んだ養液栽培技術を生かし、法人化を目標に取り組んでいる。
*「30歳すぎには地元徳島に帰ってきて仕事をしたいと考えていました」と勝又さん。東京や静岡で約10年間、飲食業やアパレル業界で働いていたが、お盆の帰省中にきゅうりタウン構想のことを知り、すぐにJAへ話を聞きに行った。そのときに将来のビジョンが見えたことがきっかけで、16年に海部きゅうり塾に入塾した。
*18年に美波町のレンタルハウス(17㌃)でキュウリの養液栽培を始め今年で3年目。8月と9月に収穫する夏キュウリと11月から翌年6月まで出荷する冬キュウリを栽培し、周年出荷に取り組む。
*「夏に向いている品種選びに気を付けています。現在は、『はやか』と『グラッチェ』の2品種、約1600株を定植しています。カボチャ台木の接ぎ木栽培とポットで苗を栽培し、そのまま定植する栽培方法です。ポット苗は、2重にしたポットで苗を作ります。内側のポットは底に穴を開けていて、苗が育つとそのまま取り出して、苗床に直接置くだけなので省力化につながっているんですよ」と話す。
◎仲間づくりにも一役
*作業が忙しい中でも、就農・移住体験ツアーの体験ハウスを積極的に受け入れる。「今年は新型コロナウイルスの影響でツアー自体がなくなりましたが、昨年は3回受け入れました。新規就農者の相談には、キュウリ栽培の収支を積極的に公開しています」と勝又さん。キュウリ作りの仲間を増やすことに貢献している。
*「企業や雇用が少ない地元での就職は簡単ではないと思っていました。これからいろんな人に農業を勧められるよう、収入の安定を確保し、休みもきっちり取れるようにしたい。そのためにも、自分だけが作業できるのではなく、作業を任せられる従業員を増やし、法人化して、地元の雇用の場になりたいです」と話してくれた。
写真説明1=摘芯作業に励む勝又さん。「夏場のハウスは暑い。体調管理に気を付けています」
写真説明2=ポット苗はそのまま定植して養液で栽培する