・単為結果性ナス「ラクロ」 作業時間を大幅に削減、高品質果を安定出荷

・単為結果性ナス「ラクロ」 作業時間を大幅に削減、高品質果を安定出荷

*促成ナスの栽培で最も大切な仕事といえるのがホルモン処理だ。処理のタイミングが生産や品質の安定に直結するため、労働力不足や高齢化の進む地方では、大きな作業負担が栽培規模の減少につながる課題となっていた。阿波市市場町で促成ナスを栽培する市川誠宜さんにとっても、ナスのホルモン処理は大きな悩みの種だった。それらの悩みを解決するため、ホルモン処理が不要な単為結果性ナス「ラクロ」の試験栽培に、2016年から普及指導員の指導を受け取り組んでいる。
*市川さんは妻の初江さんと、ナス10㌃のほかハクサイ1・5㌶、水稲1㌶を栽培。ラクロの栽培を本格的に始めて3年になる。
*ラクロは樹勢がおとなしく、以前の4本仕立てから2本仕立てに変わり、1本から収穫できる個数は減った。しかし、以前より着果率が良くなり、奇形果が減ったことで、高品質な果実の割合が増え、出荷量が安定。ほかにも、ナスの作業時間が減ったことでほかの仕事を割り振りやすくなったことも、多品種を栽培している農家にとって大きな改善点だったという。
*ラクロにはほかにも生産者に優しい特徴がいくつかある。とげが無いため、果実自体に傷がつくことが少なく作業時のけがも少なくなった。また、皮がしっかりしているため、ナス自体の水分が抜けにくく棚持ちがいい。火を通しても煮崩れしにくく、いろいろな調理方法に活用することができる。
*ラクロを出荷し始めたころは、周知を図るためパッケージに品種の説明や調理法を載せるなど売り出し方を工夫したという。市川さんは「生産者としては、消費者にスムーズに受け入れられるかという心配がありました。しかし、ラクロの形がもともと流通の多かった『千両』と似た長卵形のためか、抵抗なく受け入れられたという印象です」と話す。
*試験栽培から数年たち、生産から出荷までが軌道に乗ってきたため、阿波市・吉野川市の7割近くのナス農家がラクロに切り替えている。省力化と安定した品質が実現されたことで、栽培規模を増やそうか考えているといった意見を聞くという。
*市川さんは「促成ナス栽培の大きな課題となっていた部分が改善されてきています。この記事を読んでナス栽培を始めたいと思ってもらえればうれしく思います」と笑顔を見せる。

写真説明=「とげが無いため、作業するときのけがが少なくなりました」という誠宜さんと初江さん