*栽培・加工・販売を先導する徳島県美馬市の研究会
*加工品に全国から注文/耕作放棄地対策にも一役
*キクイモを栽培する美馬市脇町の三笠桂司さんは、キクイモの周知と販路拡大のため、栽培農家を集め「徳島県美馬つるぎ地区キクイモ栽培加工消費研究会」を立ち上げた。会員が栽培したキクイモは、生食用のほか、チップスやパウダーに加工され、地元の産直市やイベントで販売している。珍しい健康食品ということもあり、全国各地からの個人注文も多いという。
* ◆雑草や病害虫に強い
* 三笠さんがキクイモ栽培を始めたのは2011年。妻・英子さんの「キクのような花を咲かせる芋がある」という言葉に興味を持ったことからだった。翌年には研究会を立ち上げ、現在は会長を務める。
* キクイモは雑草や病害虫に強く、農薬散布や施肥などを行わないため、植えた後は手がかからない。そのため、高齢化の進む中山間地の耕作放棄地対策としても一役買っている。収穫期は11月末~3月ごろの農閑期で、収量は1株当たり1~2㌔になるという。
* 三笠さんは「会員の圃場で連作障害の白絹病が発生しました。目下の課題は連作障害対策ですね。また、50㌢間隔に植えられたキクイモは圃場に広々と根をはわせるため、収穫作業は一番の大仕事です」と話す。
* ◆使いやすいパウダー
* キクイモには食後の血糖値の上昇を抑える効果や、脂肪蓄積抑制効果のあるイヌリンが豊富に含まれ、食物繊維が豊富なため便秘改善の効果もあるという。
* 血糖値が高かったという三笠さんは、健康のためにスムージーにして毎朝飲んでいる。また、自らの経験をもとに「パウダーはサラダやきんぴら、みそ汁に混ぜたりすれば、毎日の食事に取り入れやすいですよ」と薦める。
* キクイモを加工するうえで一番大切にしているのは安全性だ。きれいに洗ったようでも、乾いてから確認するとコブの部分などに小さな汚れが残っていることに気づく。そのような小さな汚れも残さないために、洗浄や乾燥の仕方を工夫するという。
* 最近では地域の学校給食にも提供しているため、研究会では生で出荷するキクイモの品質を25㌘以上・コブ二つ以下と定めて高い品質を保っている。
* 今後の展開については、「うちのキクイモが世界農業遺産の『にし阿波の傾斜地農耕システム』ブランドとして認証されたので、認証品のロゴマークを商品のパッケージに付けています。それにより手に取ってもらえる機会がさらに増えるのではないかと期待しています。最近は、全国の個人客への対応をスムーズに進めるためにパソコンの勉強なども始めました」と話してくれた。
* ▽集団営農で水稲約300㌃、キクイモ50~60㌃(年間収量約20㌧)
写真説明=チップスとパウダーの商品を手に「根を広げたキクイモの収穫作業は一番の大仕事です」と三笠さん