* 「野菜は食べてみないと味が分からないから、どうしても見た目で選ばれるようになります。より新鮮でおいしく、きれいなものを出荷できるよう、自分で納得のいく野菜作りをしたい」と話すのは、市場町で生食用ケールを栽培する木津主雄さん。栽培を始めたきっかけは、新しい品目を育ててみないかと種苗店から勧められたことだったという。1年目に500株を定植し、現在4年目。通年栽培を目指し試行錯誤を重ねている。
* ケールは、栄養価は高いが苦味がある青汁用のイメージが強い。しかし、生食用は、加工用よりクセが少なく、そのままサラダなどで食べられる。
「主食野菜になることはなかなかないが、固定のリピーターがいる野菜。特に冬場のケールは、葉にフリルが多くしっかりして、内に蜜をためるようになります。茎を折ると透明な蜜があふれて甘味が増すので、一度食べてみてほしい」と木津さん。
*主な販路は四国4県、大阪など。生食用で出荷するので、できるだけ安心な状態で出したいと考え、イオン発生機の導入を決めた。
「たとえ消費者に伝わらない部分でも、少しでも気を配ることで品質を保てます。そうした信頼の積み重ねが、結果的に栽培農家を守ることにもつながるのだと思います」
* 農薬による防除はなるべく減らし、樹液が成分の忌避剤を使用するという。薬剤費は割高だが、これも差別化の取り組みの一つだ。
* 生食用ケールのほかに、カリフローレも栽培。カリフラワーの変種であるカリフローレだが、耐病性が低く、気温の変化に敏感で、50㌃の作付けに対し収穫に至ったのが10㌃だったこともある。耐病性に優れた新品種ができたので、それも試したいという。
* 木津さんが好きなケールの食べ方は新芽の天ぷら。しかし、新芽は柔らかく出荷できないため、それを食べられるのは農家の特権だという。「農家は〝食べてナンボ〟だと思います。自分が特別こだわりを持ってやっているとは思いませんが、播種時期や植え方など試行錯誤を重ねて、通年で収穫できるようにしたい」と話してくれた。
* ▽木津さんの経営=ケール10㌃、カリフローレ40㌃、ハクサイ40㌃、キャベツ15㌃、水稲「コシヒカリ」60㌃、肉用牛7頭、発酵粗飼料用稲・飼料作物など。
写真説明=「変わったもの、人とは違うものも栽培していきたい」とケール畑で笑顔の木津さんと妻の直美さん