_日本の美しい原風景でもある棚田や茶畑が連なる徳島県三好市山城町。標高200㍍ほどに位置する同町上名で、稲わらを有効利用して「猫ちぐら」作りに取り組んでいるのが、本見忠義さん。猫ちぐらは、稲わらをドーム型に編み上げて作られた猫の寝床のことで、近年は猫ブームも相まって、需要や人気が高まってきている。「猫ちぐらが山城町を知ってもらうきっかけの一つになってくれたら」と本見さんは穏やかに話す。
◎一つの製作に10日間
_もともと手先が器用で、木彫りや竹細工などを趣味にしていた本見さん。県外の新聞で猫ちぐらの記事を偶然見た妻から、「作ってみたら面白そう」と紹介されたことがきっかけで、製作を始めたという。
草履、しめ縄などを作った経験はあっても、猫ちぐらは作ったことがなかったので、さっそく現物を県外から取り寄せた。編み棒を自作し、網目を観察しながら独学で編み、試行錯誤しながら納得がいく形に作り上げた。気づけば、作り始めて20年を迎えているという。
_自家の水稲10㌃から取れる稲わらだけで編み上げ、一つ製作するのにわらを10束ほど使用し、約10日間で完成する。
_「水稲は消毒をほぼ行わないように栽培している。病気対策には気を使うが、人にも猫にも優しいものができるので、苦労に感じることはない」と本見さん。「一つ買ってくれて、『猫が気に入って取り合いをするから』とまた注文してくれた方もいる。実際に使っている写真や、飼い主さんの喜びのお便りが届くのはやはりうれしい」と話す。
◎仲間が増えてほしい
_本見さんが作る猫ちぐらは、高さ約33㌢で、直径が3サイズ(大=約40㌢:2万4千円、中=約35㌢:2万円、小=約30㌢:1万8千円)。近隣の観光・宿泊施設などに見本を置いて販売を代行してもらい、そこで目にした県内外の人から問い合わせや注文が入る。現在は、娘にも作り方を教えながら一緒に製作し、いずれはネット販売にも挑戦してみたいという。
_「手先を動かすので、認知症予防にもなるし、高齢者でも自宅でできるところがいい。元気なうちはずっと作り続けていきたいし、猫ちぐらが山城町を知ってもらうきっかけの一つになってくれたらと思う。周りや他の地区でも猫ちぐらを作る仲間が増えて、交流につながったらいいなぁ」と笑顔で話してくれた。
写真説明=「自家栽培した稲わらだけで編み上げ、人にも猫にも優しいものをと作っています」と本見さん