自ら配達して陳列を工夫 購買層に合わせた品ぞろえ
_「農業が楽しくてしょうがない。でも無理せず、自分や家族のペースを大切にやっていきたいですね」と話す阿南市中林町の粟飯原勝さん。家族4人とパート従業員3人で、水稲34㌶、キャベツ、ブロッコリーなどの露地野菜2㌶、ハウスで水稲育苗以外の時期に野菜を数種類栽培している。米や野菜の販売方法を工夫し、売り上げは年々上昇しているという。
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_粟飯原さんは、33歳のときに会社員を辞め実家の農業を継いだ。10年ほど前、稲作がほとんどだった栽培形態から露地野菜の作付面積を増やした。 「経営は米が主力。年々下がる米価の対策として、施肥量や施肥回数を抑えられる肥料へ切り替え、大量に発注することで経費を抑えるなどしています」
◎視察で売れ筋チェック
_米や野菜の出荷は、JAのほか約20カ所の産直などで積極的に販売する。自ら配達することで、商品の陳列を工夫することができるからだ。また、独自制作したシールを貼って見た目も重視する。年に何度も県外の産直やスーパーへ出向き、何が売れているか、どうすれば売れるのか観察しているという。
「産直の立地や購買者層のことも考えます。例えば大学が近い場所なら、学生さんが買いやすい米は精米をした1㌔入りだろうなとか。そのために米袋の規格を、30㌔入りのほか、1、2、3、5㌔入りにしています。野菜については、小型が売れるような場所にはそういった大きさのものを出したり、珍しい野菜を置いた方が良さそうな場所にはそれを置いたりという工夫はいくつもしています」
_こういった取り組みが功を奏し、産直に出す商品の売り上げは年々上昇しているという。
◎農業の楽しさ伝えたい
_農業で自立を目指す若者が集まる会(阿南市主催)にも積極的に参加して交流を深める。「新規就農者が集まる会では、農業の現状や自分の売り上げなどありのままを話します。一番伝えたいのは、今、自分が本当に楽しんで農業をしているということ。そうやって若い人たちに言うのも僕ら世代の役目でしょう」
_「天候に左右され、賭けのような要素もあるし、農業を取り巻く状況は厳しいかもしれませんが、やり方次第で道は開けると思うんです。遠回りでもいい、楽しみながらゴールにたどり着けたらそれが一番ですよ」と話してくれた。
写真説明上=ブロッコリー畑で粟飯原さん。「次世代に農業をつないでいく取り組みにも力を入れたい」という
写真説明下=産直の立地や購買者層のことも考え、精米した米を1㌔単位で販売