_9割以上が森林の山間地域で、奥地には高の瀬峡や剣山スーパー林道などの大自然があり、紅葉の季節には数多くの来訪者でにぎわう那賀町木頭地区。木頭特産の「木頭ゆず」の青果は東京、大阪などの市場で高く評価され続けている。その木頭ゆずが今年9月、県内では初めてGI(地理的表示)保護制度の登録産品となり、高品質なブランドとして販売価格の上昇や輸出促進が期待される。
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_「光沢があって、香りが抜群」と収穫中に笑みを浮かべる平川誠さん(木頭果樹研究会会長)は、約60㌃の畑で約400本のユズを栽培している。木頭ゆずは、1960年の大阪市場初出荷以来、半世紀以上かけて優良系統の選抜を繰り返し、現在の木頭系苗木につなげている。
◎色鮮やかで大玉・香り高く
_標高千㍍を超える山々に囲まれ、夏から秋にかけて冷涼で昼夜の寒暖差が大きく、降水量も多い木頭地域。これらの条件が、大玉で色鮮やかな外観と高い香りを放つ木頭ゆずを生み出すという。
「消毒などの病虫害防除をしっかり行って青果率を上げれば、収益も上がるはず。今日まで受け継ぎ、築き上げてきた高品質を維持するために頑張っています。そんな自分たちの姿を見て若者が、われも続けとなってくれれば地域ももっと活気づくのでは」と平川さんは意気込む。
◎3年前からEUへ
_JAあなん常務で木頭ゆず振興協議会会長の木村晃さんは、「3年前からEU(欧州連合)への輸出に取り組んでいますが、海外では高品質はもとより地理的表示産品への関心が高く、国内でのGI登録の重要性を感じました」と話す。
_GI保護制度とは、世界100カ国を超える国で広く認知され、生産地と品質などの特性が結びついた産品の名称を知的財産として保護する制度。今年の9月15日に国の書類審査や現地調査などを経て、全国42番目のGI登録となった。
_「本年度はフランスを中心に約2.5㌧の輸出を計画しています。また、新たな試みでドイツの食品見本市にも参加しました。これを機に国内外を問わず、より一層の知名度向上や販路拡大に努めていきたいです」と木村さんは話してくれた。
写真説明上=出荷の最盛期を迎え大忙しの平川さん
写真説明中=色鮮やかな黄色の大玉で香り高い「木頭ゆず」
写真説明下=一つずつ丁寧にはさみで切り取っていく平川さん