_県内を東西に流れる1級河川・吉野川の流域では、藍の原料となるタデアイが栽培され、藍染めの元となる藍染料「すくも」作りの本場として、現在もその伝統が引き継がれている。藍を生産し、すくもに加工する人たちを「藍師(あいし)」と呼ぶ。県内に現存する藍師は5人で、上板町の新居修さんは、このうちの一人。全国で使われているすくものほとんどが、徳島県で作られた阿波藍と呼ばれるすくもだ。
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_藍は、原料のタデアイというタデ科の植物から作る。収穫して乾燥し、発酵させて、すくもと呼ばれる染料にする。
_新居さん方は明治時代から続く藍師で、息子の俊二さん、娘の加容子さんと県外からの研修生1人の4人で2㌶の畑でタデアイを栽培。契約農家から4㌶分のタデアイも仕入れてすくも作りを行っている。
◎6月下旬から収穫
_タデアイは3月に作付けし、収穫は6月下旬から始まる。収穫したタデアイは天日と乾燥機で乾燥させた後、葉と茎に選別する「藍粉成(あいこなし)」作業に移る。
_選別した葉は「葉藍(はあい)」と呼ばれ、稲わらでできた袋(ずきん)に入れて秋まで保管。残った茎の部分は鶏ふんや豚ぷんと混ぜ合わせて堆肥にし、次年の作付け時に連作障害対策として畑に施肥する。
_10月になるとすくも作りは本番を迎え、保管していた葉藍を発酵させるため、「寝床」という建物内に、ずきんから出して山状に積み、水をかけて切り返す。この作業を週に1度、120日間繰り返すことにより、ようやく葉藍が染料の元のすくもとなる。
国選定文化財阿波藍製造技術保持者である新居さん。すくも作りは、熟練の技と大変な労力が必要だという。
◎効率化などが課題
_新居さんは、「藍師として一番の使命は、今まで続いてきた藍の歴史を次世代につなげていくことだと思っています。そのため重要なのは、タデアイ生産者や不足しているすくも作りに欠かせないむしろ(筵)のさらなる確保、効率化への工夫が課題です」と話す。
_また「今まで私からすくもを買っていただいている方々の信用を守り続けることも大事。どれも簡単ではありませんが、藍の歴史を守っていきたい」と新居さんの挑戦は続いている。
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