レンコン 産地担う一翼に

レンコン 産地担う一翼に

河野一郎さん
徳島市
父の遺志継ぎ栽培に情熱

徳島県では、吉野川下流域を中心にレンコンが栽培されており、全国で2番目の出荷量を誇る産地だ。その主な産地の一つ、徳島市川内町米津で、河野一郎さん(51)は他界した父親の喜美さんの遺志を継ぎ、3.3㌶でレンコンの栽培に情熱を注いでいる。

河野さんは47歳で自衛隊を退職し、就農して4年半。定年まで7年だったが「今思うと、父の『継いでくれたら』との思いにひかれるように就農を決意した気がします」と当時を振り返る。
自衛隊時代は施設管理の仕事で大型機械を扱っていたため、農業機械は楽に乗りこなせたという。ちょっとした溶接や修理もできるなど、自衛隊時代の技術が役立っている。「ただ、栽培技術となると、『父にもっと教えてもらっていたら』との後悔もありますが、近所の栽培農家の皆さんや生産組合のメンバーが親切に教えてくれるので感謝しています」と話す。
経営面積は露地栽培2.7㌶、ハウス栽培0.6㌶。主な労働力は、妻の麻理さん(44)と母親の依江さん(73)の3人だ。夏場のハウスレンコン出荷時はパートを雇っている。
栽培品種は「だるま」系で2月から4月にかけて、土壌を整えて種を植える。5月末から7月初旬までがハウス栽培の収穫。露地栽培は8月末から翌年2~3月にかけて収穫する。ハウス栽培と露地栽培の切れ間に2年掘り(2年かけて栽培したもの)を収穫し、一年を通じて出荷している。
同地区で収穫されるレンコンは、砂質土が手伝ってか、柔らかくサクサクした食感が好評だ。販売はJAを通じて関西に流通し、ハウスものは東京方面へも出荷されている。

無人販売所でも提供

一方で、朝掘りたての新鮮なレンコンを無人販売所でも販売。新鮮で安価とあって、口コミで評判が広まり反響が大きい。近隣はもちろん県外客にも人気で、代金と一緒に「いつもおいしいレンコンをありがとう」と手紙が入っていることも。手紙を読むと「また、頑張って食卓に届けようという気にさせてくれます」とうれしそうに話す。
今後は、単価の良いハウス栽培を増やしたいと考えているが、設備費用の経費の捻出が課題という。「欲はないです。『レンコン掘るときは楽しそうやなあ』と家内に言われます。いいレンコンが収穫できたときは、本当にうれしいです」と笑顔の一郎さん。
「要領が分かって慣れてきたせいか、一年がとても早く感じます。『絶対に手は抜かないこと』をモットーに、人とのコミュニケーションを大切にしていきたい」と、産地を担う一人として全力投球の毎日だ。


写真説明①=一郎さんが、機械を使って水圧でレンコンを掘り起こし、麻理さんが節のひげ根をはさみで切り落とし船に乗せる


写真説明②=「夏場は朝5時と早いですが家族で楽しく作業しています」と一郎さん


写真説明③=作業場で、選別、箱詰めをする麻理さん