勝町正木の高橋信幸さん(68)、小枝子さん(68)夫妻は、農作業を通じた交流を大事にしたいと、農家民宿を営む傍ら果樹のオーナー制度を導入。キウイフルーツが人気を得ている。
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「キウイの品種は『ヘイワード』で、雌樹9本植えているので9組のオーナーを受け入れています。口コミで希望者が増えているので、苗木を植えて増やしていこうと思っています」と話す信幸さん。
「キウイは消毒していないのでその分、天候に左右されます。自然交配が難しいのでこうして授粉しています」と、容器に入った花粉を1花ずつ丁寧にかけていく。オーナーに行ってもらう作業は、5月の授粉と6月の摘果、11月の収穫作業の3回だ。
授粉作業に来ていたオーナーの一人、鳴門市の喜瀬英之さん(73)はオーナーになって3年目。樹(き)のオーナーになりたくて、全国のオーナー制度を調べた結果「高橋さんのキウイに決めて、シルバー大学院健康スポーツOB会に声を掛け、10期、12期の32人で1本のオーナーになりました。作業も楽しいのですが自然とふれあえるのが一番の楽しみで、1時間10分かけて仲間と通ってます」と慣れた様子で作業する。
信幸さんは、「こうして樹にさわってもらうのが大事なんです。作業しながら地元上勝町の情報を発信し、逆に町外のことを教えてもらう。この交流がいいんですよ」と笑顔で話す。
信幸さんは今年、水稲を35㌃栽培。「幼少時代はミカンの価格が良くて、お米は55年くらい作っていませんでした。退職を機に栽培面積を増やしています」と米作りにも力を入れる。清流で栽培した米は「おいしい」と評判で、オーナーからの注文もあるという。
「子供の頃にいたカエルやトンボ、ヘビなどは自然にいるべきです。田んぼにはカブトエビやホタルもいますよ。地域が荒廃しないよう、この自然を大事にしていきたいですね」と熱い思いを話す。
古民家を改装した1日1組限定の農家民宿は6年目を迎える。野菜の収穫や稲刈りなどの農業体験が人気で、アスパラガスやパプリカは、見るだけでも楽しいと好評だ。小枝子さんは、「県外からの申し込みも多く、地域の大自然にふれてもらったり、町内の観光地を散策したりと有意義に過ごしてもらってます」と手応えを感じている。
「農業者の立場から、安心で安全な地産地消にも取り組んでいます。いろんな形で農業をしたいと思っている人がたくさんいるのが分かります。共に農業を支えていきたいですね」と二人で楽しみながら汗を流している。
▽農家民宿「わっか」(電話0885・45・0458)