カテゴリー別アーカイブ: 農業共済新聞

農業共済新聞(3月)を更新しました

備えて安心 園芸施設共済
営農の早期再開に加入は不可欠
徳島県阿波市  阿部 正德さん
▽あべ・まさのり、72歳▽ハウス6棟18㌃(サツマイモ苗)、水稲(主食用米)50㌃、WCS(発酵粗飼料)用稲750㌃、キャベツ250㌃

_両親から家業を継ぎ、就農して50年になります。園芸施設共済制度がまだなかったころに、建設したばかりのハウスが強風で倒壊し、建て直すといったことがありました。自力で再建する大変さを痛感した経験が、園芸施設共済制度の実施後に加入を決めたきっかけです。
_園芸施設共済への加入に併せて、クロスタイバーや筋交いを設置して補強するなど、万一のための「二重の備え」で、安心感を持って営農を続けられています。
_施設を補強していても、近年頻発する大型台風などで被害を受けることはあります。一昨年の突風では、園芸施設本体に大きな被害を受けました。しかし、制度が改正され本体への補償がより充実していたおかげで、修理に対して十分な支払いを早急に受けることができました。
_24歳のとき農業派米研修に参加し、海外の大規模農業に触れることで大きな刺激を受けました。農業の効率化を目指し、販路の開拓や農地の集約、区画整理などで規模を拡大していく中で、農業機械を多く導入し機械化を図ってきました。
_農業機械の事故があったときに、農機具共済にも加入していたことで共済金の支払いを受けることができました。営農の早期再開のためにも、「備え」は必要不可欠だと感じました。
_効率化を進めた結果、作業時間と人手にゆとりが生まれました。その時間を使って作物栽培の研究ができ、品質の向上と安定した供給につながり、昔は人を雇っていた経営が今では親子3人で営農規模を維持できています。これからもできる限り長く家族で農業を続けていくことが私の目標です。

農業共済新聞(2月)を更新しました。

従業員が安心して働ける環境に
自社ブランドの販路拡大
鳴門市 旨味家ファーム㈱
_サツマイモ農家の3代目として家業を継いだ鳴門市大津町の村上真一郎さん(48)は、「旨味家ファーム株式会社」を2019年4月に設立。サツマイモ4㌶、ダイコン2㌶を作付ける。
_代表取締役の村上さんは、法人化することで社会への信用度が高まり、安定した雇用を確保するメリットがあると考えている。職場環境の改善に取り組み、「個人経営時には満足にできなかった就業条件の整備や福利厚生の充実に力を入れ、休暇制度を徹底しました。その結果、従業員が安心して働きに来てくれています」と話す。
_従業員が楽しく仕事ができるように、アイデアや意見を言い合える職場を心がけている。「従業員の一人一人の得意分野を生かすことが、会社の成長や利益につながると考えています。広報が得意な従業員のおかげで、SNS(交流サイト)や対面販売を利用した活動が可能になり、自社ブランド『旨味金時』を多方面へアピールできるようになりました」と話す。
_こうした取り組みで販路拡大に成功し、さらなる経営展開の計画を立てている。

「旨味金時はホームページ上のオンラインショップでも販売しています。ぜひ一度ご賞味ください」と村上さん(写真提供=旨味家ファーム)

農業共済新聞(1月)を更新しました。

_コロナ禍や資材高騰などの逆風に負けず、地域に根差した農業を目指して奮闘する若手農業者。その取り組みや今後の展望を話してもらいました。

B級イチゴを活用/ロスが減り輸出も
徳島県徳島市 西岡さち子さん(40)
_「自分の子どもに食べさせたい安全なイチゴを作る」をモットーに、徳島市勝占地区でイチゴを栽培しています。東日本大震災の影響で、自分が口にする食材を自身で作る農業の素晴らしさを再確認し、2012年に家業の有限会社西岡産業を継ぎ就農しました。
_就農にあたって、安定した営農とするために、従来の家族経営をパートタイム従業員の雇用や農福連携の作業委託などへと経営方法を見直し、作業の効率化・能力の向上を図りました。
_作業効率の向上や労働力の増加で、課題だったB級品の有効活用にも取り組み始めました。現在は自社のB級品だけではなく、JA徳島市を仲介して勝占東部イチゴ部会から規格外品を買い取り、ジャムやジェラート、冷凍イチゴに加工し販売しています。
_冷凍イチゴは、ジェトロ(日本貿易振興機構)を経由して輸出しています。海外にまで販路が広がり、「勝占いちご」を広く知ってもらえるきっかけになったと考えています。
_安定した営農のために改善した点が、食品ロス削減や販路拡大に役立ったと感じています。今後も勝占地区のイチゴ農家全体で、勝占いちごを盛り立てていきたいです。
_▽有限会社西岡産業取締役(パートタイム従業員は常時3人、ヘルプ3人)。ハウスイチゴ「ゆめのか」「さちのか」28㌃

「パートには子育て中の女性が来てくれています。同じように子を持つ親として心強いですね」と西岡さん

 

 

農業共済新聞(11月)を更新しました

「木頭ゆず」で持続可能な営農へ
徳島県那賀町 ㈱黄金の村
雇用創出で地域に貢献

_【徳島支局】「地域に新たな雇用を生み出し、その発展に役立ちたい」と話す神代晃滋さん(60)は、那賀町木頭地区にある「株式会社黄金の村」の取締役。同社には、地元住民だけではなく県外や海外からスタッフが集まり同地区を盛り立てている。栽培の現場をまとめる神代さんは、林業を目指し大阪府から徳島県へIターンし、「木頭ゆず」に魅了され農業に転向。当初は個人でユズを栽培していたが、2013年に過疎化が進む同地区をユズで再び輝かせようという思いから、自社栽培と加工を営む黄金の村を設立した。

_剣山系の山々に囲まれた盆地に位置する同地区は、夏と冬の寒暖差が激しく、年間降雨量は四国1位の記録があるほど多い。これらの条件が合わさることによって、香り高く酸味の強い木頭ゆずが育つ。
_同社では、自社栽培のほか約120戸の契約農家から木頭ゆずを仕入れ、自社工場でポン酢やゆずこしょうなどの調味料、スイーツ、サイダーなどさまざまな商品へと加工する。
_海外への営業にも取り組み、フランスや米国などへユズ玉やユズ加工商品を輸出し、販売量全体の約3割に達するという。そうした試みがユズの産地としての持続可能な営農を実現している。
_神代さんは16年からオーストラリア原産のかんきつ類「フィンガーライム」の生産にも取り組む。4~8㌢の果実に詰まっている粒状の果肉と独特な強い酸味が人気で、フランス料理などの高級食材として使用されている。「フィンガーライムをユズに次ぐ新たな木頭のブランド作物にしたい」と神代さん。日本料理でも使われるような身近なものになり、市場の拡大につながればと期待する。
_新たな市場開拓に踏み切り、その挑戦を引き継ぐ次世代の雇用にも希望を見いだしている。神代さんは「木頭に来てから17年たつが、高齢になった自分が新たな取り組みをできるぐらい、今もなおここは可能性に満ちている」と話してくれた。

 

黄金色に輝くユズを一つ一つ丁寧に摘み取る神代さん 収穫時期が異なる3種の木頭ゆず果汁「黄金の雫」(写真提供=神代さん)

 

農業共済新聞(9月)を更新しました。

好評の古代米「弥生紫」 文化財「阿波晩茶」
伝統製法を次世代に伝えたい
阿南市 新居義治さん
_【徳島支局】農薬・化学肥料を使わず米と茶を生産する阿南市那賀川町の新居義治さん(47)は、オンラインショップ「なかがわ野菊の里」を運営し、自身の農法と商品をPRする。
_販売する米の中で、平城京に献上されたといわれる古代米「弥生紫」は、もっちりとしたやわらかい食感と甘みが好評だ。農林水産省主催のフード・アクション・ニッポンアワード2016では上位10選の「究極の逸品」に選定された。
_「伝統を守りつつ食の安全・安心を届けたい」と新居さん。2019年には、国の重要無形民俗文化財に選定された「阿波晩茶」の製造を始めた。10年以上放棄されていた茶畑を整備し茶葉を栽培。夏季の成長した茶葉を摘み、木おけで乳酸発酵させ、天日乾燥する伝統的な製法を守る。
_「利便性や生産性が重視される今だからこそ、昔の人が残してくれた食への感謝の心、伝統的な製法での農作物、食品の魅力を次世代に伝えていきたい」と話してくれた。

 

発酵後の茶葉の天日干しに励む新居さん夫妻

農業共済新聞(8月)を更新しました。

収入保険・私の選択
徳島県徳島市  天羽 俊文さん
補償の安心感が効率化推進

_けがや病気で収穫できなくなり収入がなくなることを不安に思っていたころ、NOSAI職員から収入保険が始まるという説明を受けました。農業共済にはない補償内容に魅力を感じ、2021年から収入保険に加入しています。
_収入保険に加入するために加入条件である青色申告を始めましたが、複式簿記の知識がなくても、自宅のパソコンと青色申告ソフトを使って簡単に申告することができました。自分の経営状態が把握できるので、今後の営農計画が立てやすくなりますね。
_地域の耕作放棄地を少しでも減らすため、離農する農家から耕作を請け負っているので、耕地は今後も増える予定です。収入保険で最低限の収入が補償されている安心感から、以前は検討するだけだった大型機械を22年に思い切って導入し、効率よく作業ができるようになりました。
_私は60歳を過ぎましたが、まだまだ現役。これからも長く農業をやっていくために、リスクへの備えや効率化のための設備投資が必要です。トラクターやコンバインは、GPS(衛星利用測位システム)ガイダンスシステムや自動走行、農薬散布の機能があるので作業効率が上がり、体への負担は少なく、事故防止に役立っています。
_最近は局地的な豪雨や異常気象など、個人の努力や備えではどうにもならないリスクが増え、私も21年に米価の下落で収入が大幅に減少しました。水稲共済では補償になりませんでしたが、収入保険に入っていたおかげで平年並みの収入まで補填することができました。
_農業は小規模農家や大規模農家、法人などさまざまな経営の形があります。あらゆるリスクに対応している収入保険は、私のような自分の働きが収入に直結する個人農家にも魅力のある保険だと感じています。

農業共済新聞(7月)を更新しました。

加工品販売、EUへの輸出も 有機ユズを丸ごと活用
徳島県三好市 中村博さん
手作業で害虫防除、園地守るナギナタガヤ

_【徳島支局】「ユズは果皮から果肉、果汁まで使うので、安心してまるごと味わってもらえる商品を届けたい」と話す三好市山城町の中村博さん(63)。標高400㍍にある中村農園の代表として「天空の徳島柚子」を栽培する。2016年に父の後を継ぎユズ栽培を始めると同時に、有機JAS認証取得を見据え、化学肥料・化学農薬を使わない栽培方法へ移行した。20年10月に有機JAS認証を取得し、ユズ玉や加工品の販売、黄色ユズのEU加盟国向け輸出にも取り組む。

_化学肥料や化学農薬を使わない有機栽培では、害虫防除や土作りが大きな課題だ。葉を食べるアゲハチョウの幼虫は手作業で1匹ずつ防除し、樹体を傷つけるカミキリムシが付かないように、これも手作業でガードネットを巻き付ける。
_ユズの下草にはナギナタガヤを植えた。土壌の浸食や養分の流出を防ぎ、夏場の地温上昇や乾燥を抑える効果が期待できる。ナギナタガヤが緑肥となり豊かな土を作り、害虫の天敵となるテントウムシやハチなどが集まるという。
_大切に育てた有機ユズをたくさんの人に味わってもらいたいという思いから、加工品は爽やかな酸味や香りを生かせるよう試作を重ねた。有機ユズ100%の「ゆずジュレ」「ゆずシロップ」を販売する。
_年間約2㌧のユズを加工品の原料とするものの、搾汁後の果皮が活用できていない。果皮を使った精製オイルや入浴剤などの開発を検討しているが、色や香りを再現させる加工技術や商品化にかかるコストなどが課題となっている。
_現在販売するユズは、約30年前に父が植樹した木から収穫したものばかりだ。老朽化で「着果の裏表が激しくなってきている」と中村さん。「ユズは果実が十分にとれるようになるまで長い年月がかかります。父が植えた木を切るのは忍びないですが、補植や改植をしながら、山城町のユズを守っていきたいです」と優しくほほ笑む。

「日当たりと見晴らしの良い農園で大切に育てた天空の徳島柚子を自信を持ってお届けします」と中村さん 園地の環境を改善する効果もあるナギナタガヤ ガードネットを幹に巻き付けユズの幼木を守る

 

 

 

農業共済新聞(6月)を更新しました。

子ども食堂に地域が協力 笑顔広がる活動を
吉野川市 明石眞和さん

_「みんなで一緒に食べることの楽しさを子どもたちに知ってもらえたらうれしいですね」と話すのは、吉野川市川島町で地域の農産物の販売を手掛ける合同会社川島えがお倶楽部代表の明石眞和さん(61)。2022年5月、同市初の子ども食堂「川島えがお食堂」を開催した。
_当日は地元の農家や精肉店が提供した食材を使った約120食分のカレーライスが子どもたちへ振る舞われた。約40人の地元高校生がボランティアで参加。子どもたちとすごろくで遊び、紙飛行機を手作りするなど交流を深めた。
_大人がサポートし、高校生など若い世代が自分たちで企画・運営できるようにと、将来の後継者づくりも考えているという。
_明石さんはボランティア団体を立ち上げ、長年行われていなかった地元の祭りを復活させるなど、町の活性化に取り組んできた。川島えがお食堂は、地域企業や団体と連携し月1回の開催を予定しているという。
_明石さんは「子どもたちが笑顔になると家族みんなが笑顔になる。地域の活性化に取り組み、みんなが笑顔になるような活動を今後も続けていきたい」と目を輝かせる。

今後の活動についてスタッフと打ち合わせをする明石さん(左)

農業共済新聞(5月)を更新しました。

備えて安心 園芸施設共済
リスクヘッジで栽培に注力
徳島県阿南市  安田 均さん

_洋ラン農家の父の後を継ぐため、2010年に東京から徳島へUターンし、シンビジウムの栽培を始めました。
_洋ランは繊細な花なので、最初はいろいろな困難がありましたが、中でも悩まされたのが自然災害によるハウスの被害です。地理的に強い雨風を受けることが多く、ハウスの倒壊や水没などを経験しました。ひどいときには、水没したハウスの中を魚が泳いでいることがありました。
_経営のためには、販売収入の安定のほかに、ハウスなどの損失に対する補てんも必要だと考え、19年に園芸施設共済への加入を決めました。
_現在はハウス25棟で、3年から4年かけて育てた切り花を、毎年6万本ほど出荷しています。施設の規模が大きいため、被害に対する不安は常につきまといます。
_夏季は洋ランを鉢ごと高冷地に移し、暑さから遠ざけて育てる「山上げ栽培」をするため、移動先にもハウスが必要になります。山上げ栽培のハウスは標高900㍍にあるため、強風や冬の雪害などの心配がつきものでしたが、共済加入後はそうした不安が解消されたように感じます。リスクヘッジを取ったことで、安心して栽培に励めるようになりました。
_先輩農家に助けられた経験から、経営には周囲との情報共有や助け合いも重要だと考えています。最近は県内の若手の洋ラン栽培農家が集まった青年倶楽部が、台風への対策案や農業保険のような公的な補償制度の情報を、メーリングリストを通じて共有するなど、横のつながりを強めています。
_農家の経営努力では避けられない部分は、農業保険の力を借りつつ、知恵や経験を寄せ合って、徳島県のシンビジウム産地としてのブランド力を強化していくとともに、お世話になった仲間に恩返しをしていきたいです。


「出荷できるようになるまでに3、4年かかるので、はらはらする場面がたくさんあります」と安田さん

農業共済新聞(4月)を更新しました。

園芸施設共済+収入保険
生産安定へ確かな備え
佐那河内村 河原重雄さん
_佐那河内村で菌床シイタケ23㌃を栽培する河原重雄さんの栽培用ハウスは、傾斜地に建っているため、台風や地震による土砂崩れで倒壊する懸念があることから、園芸施設共済に加入している。
_「最近は予想もできないような異常気象が全国どこで起きてもおかしくない状況。生産安定のために導入したヒートポンプエアコンが、異常気象に耐え切れず故障したことがある」と、付帯施設を追加加入した理由について話す。
_シイタケはほかの野菜に比べて収量が安定し、収入が大きく減少した経験はなかったが、2021年の夏以降、気温の高い状態が続き、生産量が例年の半分以下に落ち込んだ。
_収入保険にも加入していた河原さんは「想定外の収入減少を補償してくれた。万が一の備えにと加入していたが、安心できる営農・生活の安定につながった」と話す。

ハウス内でシイタケの生育を確認する河原さん